幸運と不運(3)
幸運と不運(3)(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
馬之助が家に帰り、この話を父親に聞かすと、七郎兵衛は、馬之助の持って生まれた不運を嘆いた。
「仙人様から、おまえは十字の手相を持って生まれてくると聞いたから期待していたが、物も大切にせず、中身も確認せずに捨ててしまう粗雑な性格になってしまった。それにひきかえ、源太の娘のおたまは、指が一本ひとより少なかったが、そのおかげで、人に対する思いやりや幸運をもって生まれてきた。手作りのおはぎも、ひとつで良いところ、五つ持たせたのは、おまえの性格を知っていたからだろう」
父親が残念そうに庭先に目をやると、そこに、煙が起こり、ふいに仙人が現れた。
「七郎兵衛よ、安心するがよい。運命とは努力次第で変わるものだ。心がけひとつぞ。おまえも息子の人生も今後次第で、どうにでも変化するものだ」
杖の先を振り、そう励ました。
その言葉で七郎兵衛は何かがふっきれた。昔、源太とともに子供の行く末を占ってもらってからというもの、自分と子供は恵まれているのだと勝手に思い込み、日々、期待するだけの、努力しない親子だったことに思い至ったためだ。
それからの七郎兵衛親子は、心をいれかえ、日々の仕事に賢明に向き合った。
物と一日一日を大切にしたことで、だんだんと、暮らし向きも良くなり、そのうち、村一番の金持ちになったという。
今の白山宮近くのお話。
了
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馬之助が家に帰り、この話を父親に聞かすと、七郎兵衛は、馬之助の持って生まれた不運を嘆いた。
「仙人様から、おまえは十字の手相を持って生まれてくると聞いたから期待していたが、物も大切にせず、中身も確認せずに捨ててしまう粗雑な性格になってしまった。それにひきかえ、源太の娘のおたまは、指が一本ひとより少なかったが、そのおかげで、人に対する思いやりや幸運をもって生まれてきた。手作りのおはぎも、ひとつで良いところ、五つ持たせたのは、おまえの性格を知っていたからだろう」
父親が残念そうに庭先に目をやると、そこに、煙が起こり、ふいに仙人が現れた。
「七郎兵衛よ、安心するがよい。運命とは努力次第で変わるものだ。心がけひとつぞ。おまえも息子の人生も今後次第で、どうにでも変化するものだ」
杖の先を振り、そう励ました。