仲の良い漁師(2)
仲の良い漁師(2)
2024/01/02(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
見上げると、天高い場所に、大きな閻魔の顔がこちらをのぞきこんでいる。
二人の裁きがはじまった。最初は源八からだった。
「さて、源八。人間界での職業は漁師だな」
「はい」
「この閻魔帳を見る限り、おまえは魚の殺生をしている。しかし必要ない魚は海に逃がしていたな」
「そんなことまで記録されているのですか?」
「そして、食うに困った村人に、陰ながら魚を分け与えていた、とある。事実か」
「おそれいりました」
「誰も知らぬと思っていたようだな。万里先まで見通しているのが、この閻魔帳だ。極楽と地獄どちらが希望だ?」
「できましたら、極楽のほうで」
「よかろう。わしの後ろにある、門をくぐっていけ。極楽行きじゃ。次の門へいけ」
閻魔様が言い放つと、鬼たちがしかめっ面のまま、源八の両手をかかえ、奥の極楽門らしき方角に連れていかれた。
その背中を呆然と眺めつつ、吾作は、背筋を伸ばした。自分も極楽に違いない、と自信ありげに口を真一文字に結んだ。
「さて、次は、吾作」
「へい」
「おまえの職業も漁師だな」
「その通りです。あっしも源八とともに、まじめに働いてきやした」
「それはわしが判断する」
「極楽行きでよろしかったでしょうか?」
きっぱりと伝えると、閻魔大王が帳面と吾作をぎょろりとした目玉で見比べた。次第に厳しい表情に変貌した。
「おまえは、漁師でありながら、一杯飲み屋も営んでいたな」
「へい、それがなにか?」
「食えそうもない魚まで切り開き、客に売りつけていたな?」
「そ、それは営業努力、というものでございましょう」
「やかましい。捨てるべき魚までさばいて、売りさばく。とんだ嘘つきの悪人じゃ」
「……」
その瞬間、吾作の表情が青ざめた。舌を大きな鋏で引き抜かれ、絶叫する己の姿が想像できた。
つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
見上げると、天高い場所に、大きな閻魔の顔がこちらをのぞきこんでいる。
二人の裁きがはじまった。最初は源八からだった。
「さて、源八。人間界での職業は漁師だな」
「はい」
「この閻魔帳を見る限り、おまえは魚の殺生をしている。しかし必要ない魚は海に逃がしていたな」
「そんなことまで記録されているのですか?」
「そして、食うに困った村人に、陰ながら魚を分け与えていた、とある。事実か」
「おそれいりました」
「誰も知らぬと思っていたようだな。万里先まで見通しているのが、この閻魔帳だ。極楽と地獄どちらが希望だ?」
「できましたら、極楽のほうで」
「よかろう。わしの後ろにある、門をくぐっていけ。極楽行きじゃ。次の門へいけ」
閻魔様が言い放つと、鬼たちがしかめっ面のまま、源八の両手をかかえ、奥の極楽門らしき方角に連れていかれた。
その背中を呆然と眺めつつ、吾作は、背筋を伸ばした。自分も極楽に違いない、と自信ありげに口を真一文字に結んだ。
「さて、次は、吾作」
「へい」
「おまえの職業も漁師だな」
「その通りです。あっしも源八とともに、まじめに働いてきやした」
「それはわしが判断する」
「極楽行きでよろしかったでしょうか?」
きっぱりと伝えると、閻魔大王が帳面と吾作をぎょろりとした目玉で見比べた。次第に厳しい表情に変貌した。
「おまえは、漁師でありながら、一杯飲み屋も営んでいたな」
「へい、それがなにか?」
「食えそうもない魚まで切り開き、客に売りつけていたな?」
「そ、それは営業努力、というものでございましょう」
「やかましい。捨てるべき魚までさばいて、売りさばく。とんだ嘘つきの悪人じゃ」
「……」
その瞬間、吾作の表情が青ざめた。舌を大きな鋏で引き抜かれ、絶叫する己の姿が想像できた。
つづく
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見上げると、天高い場所に、大きな閻魔の顔がこちらをのぞきこんでいる。
二人の裁きがはじまった。最初は源八からだった。
「さて、源八。人間界での職業は漁師だな」
「はい」
「この閻魔帳を見る限り、おまえは魚の殺生をしている。しかし必要ない魚は海に逃がしていたな」
「そんなことまで記録されているのですか?」
「そして、食うに困った村人に、陰ながら魚を分け与えていた、とある。事実か」
「おそれいりました」
「誰も知らぬと思っていたようだな。万里先まで見通しているのが、この閻魔帳だ。極楽と地獄どちらが希望だ?」
「できましたら、極楽のほうで」
「よかろう。わしの後ろにある、門をくぐっていけ。極楽行きじゃ。次の門へいけ」
閻魔様が言い放つと、鬼たちがしかめっ面のまま、源八の両手をかかえ、奥の極楽門らしき方角に連れていかれた。
その背中を呆然と眺めつつ、吾作は、背筋を伸ばした。自分も極楽に違いない、と自信ありげに口を真一文字に結んだ。
見上げると、天高い場所に、大きな閻魔の顔がこちらをのぞきこんでいる。
二人の裁きがはじまった。最初は源八からだった。
「さて、源八。人間界での職業は漁師だな」
「はい」
「この閻魔帳を見る限り、おまえは魚の殺生をしている。しかし必要ない魚は海に逃がしていたな」
「そんなことまで記録されているのですか?」
「そして、食うに困った村人に、陰ながら魚を分け与えていた、とある。事実か」
「おそれいりました」
「誰も知らぬと思っていたようだな。万里先まで見通しているのが、この閻魔帳だ。極楽と地獄どちらが希望だ?」
「できましたら、極楽のほうで」
「よかろう。わしの後ろにある、門をくぐっていけ。極楽行きじゃ。次の門へいけ」
閻魔様が言い放つと、鬼たちがしかめっ面のまま、源八の両手をかかえ、奥の極楽門らしき方角に連れていかれた。
その背中を呆然と眺めつつ、吾作は、背筋を伸ばした。自分も極楽に違いない、と自信ありげに口を真一文字に結んだ。
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