幸運と不運(1)
幸運と不運(1)(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
現富山県、越中の山奥に加賀沢という地域があった。
昔、上杉謙信が飛騨に攻め込む際に「騎馬して通り難き、隘路」と残しているように、山深い場所だった。
その山間近くに、七郎兵衛(しちろうべえ)と源太(げんた)という仲の良い「木こり」がいた。
ふたりに、子供がまもなく生まれた。
「今日は、山の仙人さのところへ行って、子供の運勢でも占ってもらうべ」
「わしもそう考えていたところだ。生まれてくる子が、元気だったらうれしいな」
二人は、ひとつ山を越えた先の、雲の中に頂上が飲み込まれた山へ向かった。
そこには村人たちが尊敬する白髭仙人が住んでいた。
二人は白い着物をまとった仙人に理由を告げ、平伏した。
「よかろう」
そう重々しく仙人は言い、しばらく二人の頭上に向かって、交互に杖をかざし、目をつぶった。
「七郎兵衛、おまえの子供は、手のひらに十字を刻んだ運命で生まれてくる。十字の手相の子供は、健康に育つという、よいか」
「ありがとうごぜえやす」
「源太。おまえの子供は片手が四本指で生まれてくる。よいな」
そう告げた。
七郎兵衛は幸運だと感じ、少し表情が和らいだが、源太は驚いて目をまるくした。
「よ、四本指ですか?」
「悲しむことはない。その子供は、長者の運命も、もっている」
やがて産まれた七郎兵衛の子は「馬之助」、源太の子は「おたま」と名づけられ、元気に成長した。
しかし、村の子供たちが物心ついてくると、源太の心配通り、左手指が四本しかないおたまは、「化け物」と呼ばれ、いじめられた。
女の子のため、心配したが、七郎兵衛の息子・馬之助とは仲が良く、健やかに成長した。
大きくなった馬之助は、籠細工をつくる職人となった。
しかし、父親の七郎兵衛同様、銭はそれほど稼げずに、苦しい生活が続いた。
一方、源太はまじめな性格だったこともあり日々、暮らし向きがよくなっていった。
娘のおたまは四本指だったが、見目麗しく成長したため、ふた山先の長者に気に入られ、嫁入りした。
つづく
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現富山県、越中の山奥に加賀沢という地域があった。
昔、上杉謙信が飛騨に攻め込む際に「騎馬して通り難き、隘路」と残しているように、山深い場所だった。
その山間近くに、七郎兵衛(しちろうべえ)と源太(げんた)という仲の良い「木こり」がいた。
ふたりに、子供がまもなく生まれた。
「今日は、山の仙人さのところへ行って、子供の運勢でも占ってもらうべ」
「わしもそう考えていたところだ。生まれてくる子が、元気だったらうれしいな」
二人は、ひとつ山を越えた先の、雲の中に頂上が飲み込まれた山へ向かった。
そこには村人たちが尊敬する白髭仙人が住んでいた。
二人は白い着物をまとった仙人に理由を告げ、平伏した。