白狐との約束(3)
白狐との約束(3)
2024/05/28(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
「さて、さて、どうしたものか。この話を庄屋に伝えたところで疑り深いから信じてくれるかはわからぬ。手っ取り早く、こうしようではないか。生贄などといわず、樽いっぱいに、大根や野菜などおまえたちの食い物を詰めよう。明日の晩、それをこの庭に置いておく。黙って取りに来るとよい」
惣太郎は、翌朝、庄屋に昨夜の怪奇話を伝えた。しかし、狐の正体と娘を生贄にしようとしたことまでは伝えなかった。そして、樽に食い物を入れ、庭においておくことで今後化け物はでてこない、ということを伝えた。
すると、庄屋は頷き、その晩、大きな樽を庭に用意したようだった。
「今日で私の役目も終わります」
娘にはそう伝え、庄屋には褒美はいらない、と伝えた。娘は心なしか寂しそうだった。
その晩、歌は聞こえてこなかった。
囲炉裏の火が消えることもなく、惣太郎は耳を澄ませていた。
庭のほうで風が吹いている。そのためか、草の音がはげしかった。樽を運びにきた白狐は大丈夫だろうか、と心配になった。
夜が明け、空が白み始めた頃、山中で銃声が八発聞こえた。
惣太郎はその音で飛び起きた。こんな時間に猟師が働いているはずはない。
しばらくすると、若い狩人が走って、庄屋の家にやってきた。
「どうだった?」
「見事に仕留めました。正体は白狐とその子供たちでした」
そう庄屋に狩人は答えていた。
どうやら樽の中に、食べ物ではなく、狩人を潜ませていたようだと、そのときわかった。
「庄屋さん、それでは話が違うじゃねえか」
「うるさい。お前は正直に事実を話さなかった。化け物だとおもったが、正体が狐だったとは、肩透かしだったな。これで枕を高くして眠れる」
そう言い放つと、追い出すように、わずかな金の入った袋を投げつけ、惣太郎は屋敷を追い出された。
まもなく庄屋の娘が流行り病で死んだ、とい噂が惣太郎の耳にも流れてきた。
娘の遺言は「惣太郎と一緒になりたかった」というものだと念仏寺の和尚から後日、伝えられた。庄屋は憔悴し、その日から寝込んでいるという。
全てがあとの祭りだった。
「狐の呪いだ」と噂するものもあったが、それよりも惣太郎は娘と狐一家の死を悲しんだ。
その村の山奥に「狐の祠」と呼ばれる場所がある。そこには白狐一家が祀られ、いまでも村のひとたちが食べ物を捧げている、という。
了
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
「さて、さて、どうしたものか。この話を庄屋に伝えたところで疑り深いから信じてくれるかはわからぬ。手っ取り早く、こうしようではないか。生贄などといわず、樽いっぱいに、大根や野菜などおまえたちの食い物を詰めよう。明日の晩、それをこの庭に置いておく。黙って取りに来るとよい」
惣太郎は、翌朝、庄屋に昨夜の怪奇話を伝えた。しかし、狐の正体と娘を生贄にしようとしたことまでは伝えなかった。そして、樽に食い物を入れ、庭においておくことで今後化け物はでてこない、ということを伝えた。
すると、庄屋は頷き、その晩、大きな樽を庭に用意したようだった。
「今日で私の役目も終わります」
娘にはそう伝え、庄屋には褒美はいらない、と伝えた。娘は心なしか寂しそうだった。
その晩、歌は聞こえてこなかった。
囲炉裏の火が消えることもなく、惣太郎は耳を澄ませていた。
庭のほうで風が吹いている。そのためか、草の音がはげしかった。樽を運びにきた白狐は大丈夫だろうか、と心配になった。
夜が明け、空が白み始めた頃、山中で銃声が八発聞こえた。
惣太郎はその音で飛び起きた。こんな時間に猟師が働いているはずはない。
しばらくすると、若い狩人が走って、庄屋の家にやってきた。
「どうだった?」
「見事に仕留めました。正体は白狐とその子供たちでした」
そう庄屋に狩人は答えていた。
どうやら樽の中に、食べ物ではなく、狩人を潜ませていたようだと、そのときわかった。
「庄屋さん、それでは話が違うじゃねえか」
「うるさい。お前は正直に事実を話さなかった。化け物だとおもったが、正体が狐だったとは、肩透かしだったな。これで枕を高くして眠れる」
そう言い放つと、追い出すように、わずかな金の入った袋を投げつけ、惣太郎は屋敷を追い出された。
まもなく庄屋の娘が流行り病で死んだ、とい噂が惣太郎の耳にも流れてきた。
娘の遺言は「惣太郎と一緒になりたかった」というものだと念仏寺の和尚から後日、伝えられた。庄屋は憔悴し、その日から寝込んでいるという。
全てがあとの祭りだった。
「狐の呪いだ」と噂するものもあったが、それよりも惣太郎は娘と狐一家の死を悲しんだ。
その村の山奥に「狐の祠」と呼ばれる場所がある。そこには白狐一家が祀られ、いまでも村のひとたちが食べ物を捧げている、という。
了
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「さて、さて、どうしたものか。この話を庄屋に伝えたところで疑り深いから信じてくれるかはわからぬ。手っ取り早く、こうしようではないか。生贄などといわず、樽いっぱいに、大根や野菜などおまえたちの食い物を詰めよう。明日の晩、それをこの庭に置いておく。黙って取りに来るとよい」
惣太郎は、翌朝、庄屋に昨夜の怪奇話を伝えた。しかし、狐の正体と娘を生贄にしようとしたことまでは伝えなかった。そして、樽に食い物を入れ、庭においておくことで今後化け物はでてこない、ということを伝えた。
すると、庄屋は頷き、その晩、大きな樽を庭に用意したようだった。
「今日で私の役目も終わります」
娘にはそう伝え、庄屋には褒美はいらない、と伝えた。娘は心なしか寂しそうだった。
その晩、歌は聞こえてこなかった。
囲炉裏の火が消えることもなく、惣太郎は耳を澄ませていた。
庭のほうで風が吹いている。そのためか、草の音がはげしかった。樽を運びにきた白狐は大丈夫だろうか、と心配になった。
夜が明け、空が白み始めた頃、山中で銃声が八発聞こえた。
惣太郎はその音で飛び起きた。こんな時間に猟師が働いているはずはない。
「さて、さて、どうしたものか。この話を庄屋に伝えたところで疑り深いから信じてくれるかはわからぬ。手っ取り早く、こうしようではないか。生贄などといわず、樽いっぱいに、大根や野菜などおまえたちの食い物を詰めよう。明日の晩、それをこの庭に置いておく。黙って取りに来るとよい」
惣太郎は、翌朝、庄屋に昨夜の怪奇話を伝えた。しかし、狐の正体と娘を生贄にしようとしたことまでは伝えなかった。そして、樽に食い物を入れ、庭においておくことで今後化け物はでてこない、ということを伝えた。
すると、庄屋は頷き、その晩、大きな樽を庭に用意したようだった。
「今日で私の役目も終わります」
娘にはそう伝え、庄屋には褒美はいらない、と伝えた。娘は心なしか寂しそうだった。
その晩、歌は聞こえてこなかった。
囲炉裏の火が消えることもなく、惣太郎は耳を澄ませていた。
庭のほうで風が吹いている。そのためか、草の音がはげしかった。樽を運びにきた白狐は大丈夫だろうか、と心配になった。
夜が明け、空が白み始めた頃、山中で銃声が八発聞こえた。
惣太郎はその音で飛び起きた。こんな時間に猟師が働いているはずはない。
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