鰻の変わり目(1)
鰻の変わり目(1)
2024/06/04(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
昔の話。いまの鳥取県、因幡の黒い海の中で、銀色のアジと茶色の鰻(うなぎ)が通りすがりに会話した。
「やあやあ、アジ君、お久しぶり」
「鰻君かい。あいかわらず体が細くてうらやましい」
「君こそ、泳ぎが早くて美しい」
「それにしても君は、アナゴ君と似ているね。尻尾も尖っているし、身体も茶色い」
「確かによく間違えられるよ」
そこまで互いの特徴を言い合っていると、そうだ、そうだ、といつかの話を双方で思い出した。
「鰻君、一度はキャビアというものを食べてみたい、と以前言っていたが、あれからどうだね?」
「そうだった。そうだった。あれから何度となく海の中を泳ぎ回って探したのだけれど、一向に、キャビアが見当たらないのだよ」
「なんといっても黒いダイヤだからね」
「魅力的だ」
「チョウザメの卵か。なかなか遭遇できないものさ」
「確かに」
「彼らは淡水と海水を行き来する。川で卵を産むから、海では見かけることはできない。それに気性も荒いから。気を付けないと」
「さすがアジ君、ものしりだ。相手が相手。出会えたとしても命がけさ。この世で食すのは無理かもしれないよ」
二匹は仲良く尾を振った。
そう笑っていると、向こうから真っ黒なチョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってやってくるのがみえた。
「おい、あれを見ろよ、鰻君。噂をすれば、なんとやらさ」
「本当だ。しかし、我々と違って体が大きいな。あの卵を食べる機会なんて一生に一度でもあるのだろうか」
「あのチョウザメ。腹がパンパンに膨れているぞ。さては、産卵直前だな。まだこんな場所でうろうろしているなんて、どうしたのだろう」
「それより、早く逃げたほうがいいんじゃないか」
おびえた鰻が全身をゆすって答えると、不意にチョウザメの鋭い眼光が二匹をとらえた。
つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
昔の話。いまの鳥取県、因幡の黒い海の中で、銀色のアジと茶色の鰻(うなぎ)が通りすがりに会話した。
「やあやあ、アジ君、お久しぶり」
「鰻君かい。あいかわらず体が細くてうらやましい」
「君こそ、泳ぎが早くて美しい」
「それにしても君は、アナゴ君と似ているね。尻尾も尖っているし、身体も茶色い」
「確かによく間違えられるよ」
そこまで互いの特徴を言い合っていると、そうだ、そうだ、といつかの話を双方で思い出した。
「鰻君、一度はキャビアというものを食べてみたい、と以前言っていたが、あれからどうだね?」
「そうだった。そうだった。あれから何度となく海の中を泳ぎ回って探したのだけれど、一向に、キャビアが見当たらないのだよ」
「なんといっても黒いダイヤだからね」
「魅力的だ」
「チョウザメの卵か。なかなか遭遇できないものさ」
「確かに」
「彼らは淡水と海水を行き来する。川で卵を産むから、海では見かけることはできない。それに気性も荒いから。気を付けないと」
「さすがアジ君、ものしりだ。相手が相手。出会えたとしても命がけさ。この世で食すのは無理かもしれないよ」
二匹は仲良く尾を振った。
そう笑っていると、向こうから真っ黒なチョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってやってくるのがみえた。
「おい、あれを見ろよ、鰻君。噂をすれば、なんとやらさ」
「本当だ。しかし、我々と違って体が大きいな。あの卵を食べる機会なんて一生に一度でもあるのだろうか」
「あのチョウザメ。腹がパンパンに膨れているぞ。さては、産卵直前だな。まだこんな場所でうろうろしているなんて、どうしたのだろう」
「それより、早く逃げたほうがいいんじゃないか」
おびえた鰻が全身をゆすって答えると、不意にチョウザメの鋭い眼光が二匹をとらえた。
つづく
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昔の話。いまの鳥取県、因幡の黒い海の中で、銀色のアジと茶色の鰻(うなぎ)が通りすがりに会話した。
「やあやあ、アジ君、お久しぶり」
「鰻君かい。あいかわらず体が細くてうらやましい」
「君こそ、泳ぎが早くて美しい」
「それにしても君は、アナゴ君と似ているね。尻尾も尖っているし、身体も茶色い」
「確かによく間違えられるよ」
そこまで互いの特徴を言い合っていると、そうだ、そうだ、といつかの話を双方で思い出した。
「鰻君、一度はキャビアというものを食べてみたい、と以前言っていたが、あれからどうだね?」
「そうだった。そうだった。あれから何度となく海の中を泳ぎ回って探したのだけれど、一向に、キャビアが見当たらないのだよ」
「なんといっても黒いダイヤだからね」
「魅力的だ」
「チョウザメの卵か。なかなか遭遇できないものさ」
「確かに」
「彼らは淡水と海水を行き来する。川で卵を産むから、海では見かけることはできない。それに気性も荒いから。気を付けないと」
「さすがアジ君、ものしりだ。相手が相手。出会えたとしても命がけさ。この世で食すのは無理かもしれないよ」
昔の話。いまの鳥取県、因幡の黒い海の中で、銀色のアジと茶色の鰻(うなぎ)が通りすがりに会話した。
「やあやあ、アジ君、お久しぶり」
「鰻君かい。あいかわらず体が細くてうらやましい」
「君こそ、泳ぎが早くて美しい」
「それにしても君は、アナゴ君と似ているね。尻尾も尖っているし、身体も茶色い」
「確かによく間違えられるよ」
そこまで互いの特徴を言い合っていると、そうだ、そうだ、といつかの話を双方で思い出した。
「鰻君、一度はキャビアというものを食べてみたい、と以前言っていたが、あれからどうだね?」
「そうだった。そうだった。あれから何度となく海の中を泳ぎ回って探したのだけれど、一向に、キャビアが見当たらないのだよ」
「なんといっても黒いダイヤだからね」
「魅力的だ」
「チョウザメの卵か。なかなか遭遇できないものさ」
「確かに」
「彼らは淡水と海水を行き来する。川で卵を産むから、海では見かけることはできない。それに気性も荒いから。気を付けないと」
「さすがアジ君、ものしりだ。相手が相手。出会えたとしても命がけさ。この世で食すのは無理かもしれないよ」
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