小僧と三つのお札(1)
小僧と三つのお札(1)
2024/04/23(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
ある北国の山寺に乱暴者の「栄鏡(えいきょう)」という名の小僧がいた。いつも、ウサギなどの小動物をいじめたり、大木の枝を折ったり、やんちゃをするので、和尚にたしなめられることも多かった。和尚は、あたりでは有名な禅僧で、様々な秘法を習得していた。
「和尚様、今日は隣の山へ栗拾いにいきたいのですが」
「ええぞ。栄鏡。ただし、夕方には戻るんじゃ。夜になると山姥がでるかもしれん。出たら最後、食われてしまうぞ」
「大丈夫じゃ、和尚様。山姥が出たところで、おいらが勝つわい」
小僧は誇らしげにまるい鼻をこすっていた。
「万が一、山姥が出たら、この札を差し出しなさい」
そう伝えて、木のお札を小僧の手に渡した。
「この三枚のお札はなんですか? 和尚様」
「詳しく知る必要はない。ただ必ずこの札にその時の願いをこめて相手に渡すように」
そう言い残し、和尚は寺の境内に消えていった。
「和尚様は山姥が出たら使うようにと言っていたが、こんなものは必要なかろう」
小僧は気にもとめず、懐におさめた。
栗拾いに夢中になっていると、案の定、すっかりと日が暮れてしまった。
夕焼けもみえなくなり、腹も減り、小僧が少し心細く思っているところへ、一人の腰の曲がったお婆さんが現れた。
「おい、小僧さん。おまえは栗を拾っていたのだね。栗をゆでて食わせてやろう」
そう家に呼んだ。
「ありがとう、おばあさん。ちょうど腹が減っていたのです」
小僧はうれしくなって、お婆さんの家についていった。
「鍋に湯をわかすから、しばらくお待ち」
そういうと、老婆は奥の土間へ消えた。
親切に感謝しつつ居間で休んでいると、ふと、小僧の脳裏に先ほどの老婆の最後にみせた鋭い視線がよぎった。鷲鼻の上で光る目は不気味だった。
足音を消し土間に向かい、隙間から奥を覗くと、先ほどの老婆の背筋がまっすぐと伸びぐらぐらと煮える鍋をかき混ぜている。鹿一頭を茹でられそうな大きな鍋だった。
「あの小僧、ずいぶんとうまそうだったね」
老婆はつぶやき、ひっひっと不敵な笑みをもらした。
そこで、あの老婆が山姥だったと小僧は気づいた。
つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
ある北国の山寺に乱暴者の「栄鏡(えいきょう)」という名の小僧がいた。いつも、ウサギなどの小動物をいじめたり、大木の枝を折ったり、やんちゃをするので、和尚にたしなめられることも多かった。和尚は、あたりでは有名な禅僧で、様々な秘法を習得していた。
「和尚様、今日は隣の山へ栗拾いにいきたいのですが」
「ええぞ。栄鏡。ただし、夕方には戻るんじゃ。夜になると山姥がでるかもしれん。出たら最後、食われてしまうぞ」
「大丈夫じゃ、和尚様。山姥が出たところで、おいらが勝つわい」
小僧は誇らしげにまるい鼻をこすっていた。
「万が一、山姥が出たら、この札を差し出しなさい」
そう伝えて、木のお札を小僧の手に渡した。
「この三枚のお札はなんですか? 和尚様」
「詳しく知る必要はない。ただ必ずこの札にその時の願いをこめて相手に渡すように」
そう言い残し、和尚は寺の境内に消えていった。
「和尚様は山姥が出たら使うようにと言っていたが、こんなものは必要なかろう」
小僧は気にもとめず、懐におさめた。
栗拾いに夢中になっていると、案の定、すっかりと日が暮れてしまった。
夕焼けもみえなくなり、腹も減り、小僧が少し心細く思っているところへ、一人の腰の曲がったお婆さんが現れた。
「おい、小僧さん。おまえは栗を拾っていたのだね。栗をゆでて食わせてやろう」
そう家に呼んだ。
「ありがとう、おばあさん。ちょうど腹が減っていたのです」
小僧はうれしくなって、お婆さんの家についていった。
「鍋に湯をわかすから、しばらくお待ち」
そういうと、老婆は奥の土間へ消えた。
親切に感謝しつつ居間で休んでいると、ふと、小僧の脳裏に先ほどの老婆の最後にみせた鋭い視線がよぎった。鷲鼻の上で光る目は不気味だった。
足音を消し土間に向かい、隙間から奥を覗くと、先ほどの老婆の背筋がまっすぐと伸びぐらぐらと煮える鍋をかき混ぜている。鹿一頭を茹でられそうな大きな鍋だった。
「あの小僧、ずいぶんとうまそうだったね」
老婆はつぶやき、ひっひっと不敵な笑みをもらした。
そこで、あの老婆が山姥だったと小僧は気づいた。
つづく
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ある北国の山寺に乱暴者の「栄鏡(えいきょう)」という名の小僧がいた。いつも、ウサギなどの小動物をいじめたり、大木の枝を折ったり、やんちゃをするので、和尚にたしなめられることも多かった。和尚は、あたりでは有名な禅僧で、様々な秘法を習得していた。
「和尚様、今日は隣の山へ栗拾いにいきたいのですが」
「ええぞ。栄鏡。ただし、夕方には戻るんじゃ。夜になると山姥がでるかもしれん。出たら最後、食われてしまうぞ」
「大丈夫じゃ、和尚様。山姥が出たところで、おいらが勝つわい」
小僧は誇らしげにまるい鼻をこすっていた。
「万が一、山姥が出たら、この札を差し出しなさい」
そう伝えて、木のお札を小僧の手に渡した。
「この三枚のお札はなんですか? 和尚様」
「詳しく知る必要はない。ただ必ずこの札にその時の願いをこめて相手に渡すように」
そう言い残し、和尚は寺の境内に消えていった。
ある北国の山寺に乱暴者の「栄鏡(えいきょう)」という名の小僧がいた。いつも、ウサギなどの小動物をいじめたり、大木の枝を折ったり、やんちゃをするので、和尚にたしなめられることも多かった。和尚は、あたりでは有名な禅僧で、様々な秘法を習得していた。
「和尚様、今日は隣の山へ栗拾いにいきたいのですが」
「ええぞ。栄鏡。ただし、夕方には戻るんじゃ。夜になると山姥がでるかもしれん。出たら最後、食われてしまうぞ」
「大丈夫じゃ、和尚様。山姥が出たところで、おいらが勝つわい」
小僧は誇らしげにまるい鼻をこすっていた。
「万が一、山姥が出たら、この札を差し出しなさい」
そう伝えて、木のお札を小僧の手に渡した。
「この三枚のお札はなんですか? 和尚様」
「詳しく知る必要はない。ただ必ずこの札にその時の願いをこめて相手に渡すように」
そう言い残し、和尚は寺の境内に消えていった。
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