子授け銀杏(いちょう)(2)
子授け銀杏(いちょう)(2)
2023/09/19(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
お陽様が天に昇った頃、ようやく町に着いた。夫婦は往来の激しい賑やかな町、堀端を歩いた。
「どこかに子供をくれるような良い方はいらっしゃらないでしょうか?」
すえは必死に出店の主人などに話かけた。冷たく、知らねえよ、と言われることばかりで、探し歩いたものの、どこにもそのような奇特な話は転がっていなかった。
にぎやかな城下だったが、どこか、日常につかれている人ばかりにみえた。
「遊んでいる子供たちも、すれているようだ」
夕暮れ時に、彦兵衛がこぼした。
「村の子供たちのように無邪気さは感じられませんでしたね」
帰り支度をしながらすえもうなずいた。
二人は、会うひとすべてをどこか遠い存在に感じた。
まもなく陽が落ちようとしていた。
疲れて足が重い二人にとって、帰りの道のりはとても遠いものだった。
ようやく山道にさしかかる頃、すでに空には星が輝いていた。今夜はそれほど冷えないのか、くるまっている蓑傘でなんとか寒さはしのげた。
往路で休んだ大銀杏が右手にみえてきた。すえが転んだ場所だ。
古木までやって来ると夫婦はその大木に呼ばれるように、根元の石に再び腰を下ろした。
無言で体を休めた。
すると銀杏の大木の根元から、二本の子銀杏が生えているのがすえの目に見えた。白く積もった雪の上から、成長しようと首を伸ばしている子銀杏の必死の姿だった。
眺めていると、すえに何かこみあげるものがあった。
「大銀杏様、どうか自分たちにも子供が授かりますよう、お願いいたします」
すえは涙声で、大木にすがりついていた。易の絶望的な結果が脳裏をかすめた。
「わたくしからもお願いいたします」
彦兵衛も震える声で同じように銀杏の木に向かい、すえの身体の上からすがった。
涙ながらに、一心に、夫婦は銀杏に向かってお願いをした。
つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
お陽様が天に昇った頃、ようやく町に着いた。夫婦は往来の激しい賑やかな町、堀端を歩いた。
「どこかに子供をくれるような良い方はいらっしゃらないでしょうか?」
すえは必死に出店の主人などに話かけた。冷たく、知らねえよ、と言われることばかりで、探し歩いたものの、どこにもそのような奇特な話は転がっていなかった。
にぎやかな城下だったが、どこか、日常につかれている人ばかりにみえた。
「遊んでいる子供たちも、すれているようだ」
夕暮れ時に、彦兵衛がこぼした。
「村の子供たちのように無邪気さは感じられませんでしたね」
帰り支度をしながらすえもうなずいた。
二人は、会うひとすべてをどこか遠い存在に感じた。
まもなく陽が落ちようとしていた。
疲れて足が重い二人にとって、帰りの道のりはとても遠いものだった。
ようやく山道にさしかかる頃、すでに空には星が輝いていた。今夜はそれほど冷えないのか、くるまっている蓑傘でなんとか寒さはしのげた。
往路で休んだ大銀杏が右手にみえてきた。すえが転んだ場所だ。
古木までやって来ると夫婦はその大木に呼ばれるように、根元の石に再び腰を下ろした。
無言で体を休めた。
すると銀杏の大木の根元から、二本の子銀杏が生えているのがすえの目に見えた。白く積もった雪の上から、成長しようと首を伸ばしている子銀杏の必死の姿だった。
眺めていると、すえに何かこみあげるものがあった。
「大銀杏様、どうか自分たちにも子供が授かりますよう、お願いいたします」
すえは涙声で、大木にすがりついていた。易の絶望的な結果が脳裏をかすめた。
「わたくしからもお願いいたします」
彦兵衛も震える声で同じように銀杏の木に向かい、すえの身体の上からすがった。
涙ながらに、一心に、夫婦は銀杏に向かってお願いをした。
つづく
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お陽様が天に昇った頃、ようやく町に着いた。夫婦は往来の激しい賑やかな町、堀端を歩いた。
「どこかに子供をくれるような良い方はいらっしゃらないでしょうか?」
すえは必死に出店の主人などに話かけた。冷たく、知らねえよ、と言われることばかりで、探し歩いたものの、どこにもそのような奇特な話は転がっていなかった。
にぎやかな城下だったが、どこか、日常につかれている人ばかりにみえた。
「遊んでいる子供たちも、すれているようだ」
夕暮れ時に、彦兵衛がこぼした。
「村の子供たちのように無邪気さは感じられませんでしたね」
帰り支度をしながらすえもうなずいた。
お陽様が天に昇った頃、ようやく町に着いた。夫婦は往来の激しい賑やかな町、堀端を歩いた。
「どこかに子供をくれるような良い方はいらっしゃらないでしょうか?」
すえは必死に出店の主人などに話かけた。冷たく、知らねえよ、と言われることばかりで、探し歩いたものの、どこにもそのような奇特な話は転がっていなかった。
にぎやかな城下だったが、どこか、日常につかれている人ばかりにみえた。
「遊んでいる子供たちも、すれているようだ」
夕暮れ時に、彦兵衛がこぼした。
「村の子供たちのように無邪気さは感じられませんでしたね」
帰り支度をしながらすえもうなずいた。
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