鰻の変わり目(3)
鰻の変わり目(3)
2024/06/18(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
――こいつを一度、懲らしめてやりたい。
今まで仲が良かっただけに、鰻の怒りの振り子は大きく反対側に触れた。怒気からか、みるみる体中に真っ黒い色が浮き上がってきた。
「ところでアジ君、君はあの世とこの世の境目というのを知っているかい?」
「そんなものは知らないなあ」
ぼんやりとアジが返事をするとその背後に向かって、鰻が、あっと、叫んだ。
「また、チョウザメがこっちへやってきた。早く、アジ君、先ほどの岩場に隠れたほうがいいよ」
やがて、チョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってきた。
鰻を見つけると怒ってまた追いかけてくる。今度こそ鰻は、アジの隠れる岩陰のほうに向かって逃げた。チョウザメも追いかけてくる。鰻は、アジのそばまでやってきて、ひょいと体を横滑りさせた。すると猛突進してきたチョウザメの鋭利な口先が、ぬるりと鰻の表面で滑り、隠れているアジの顔面めがけ、突き刺さるのがみえた。
まんまと、アジに仕向けた作戦が成功した。
チョウザメはそこで満足したのか、気を失ったアジをしり目に、ようやくその場を立ち去った。
アジは、チョウザメの尖った口に追突したため、生死の境を彷徨っている様子だった。
しばらくしてアジが不意に目を覚まし、急に怒りだした。
「ひどいじゃないか。鰻君。なんでボクのいる方向に逃げてくるのだい。あやうく死にかけたじゃないか」
アジは、腹を立て鰻に詰め寄った。
鰻はそこで下顎を突き出して、こう答えた。
「それがあの世とこの世の境目さ。よくお覚えておくといいよ」
それからというもの、アジと鰻の仲は急に悪くなり、鰻はアジと顔を合わせないように、川や沼で暮らすようになったという。
キャビアの件を境に、鰻の尾びれは丸く変化し、全身が黒くなり、下顎が出たので、それ以来、アナゴとは間違われなくなった、というお話。
了
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
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――こいつを一度、懲らしめてやりたい。
今まで仲が良かっただけに、鰻の怒りの振り子は大きく反対側に触れた。怒気からか、みるみる体中に真っ黒い色が浮き上がってきた。
「ところでアジ君、君はあの世とこの世の境目というのを知っているかい?」
「そんなものは知らないなあ」
ぼんやりとアジが返事をするとその背後に向かって、鰻が、あっと、叫んだ。
「また、チョウザメがこっちへやってきた。早く、アジ君、先ほどの岩場に隠れたほうがいいよ」
やがて、チョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってきた。
鰻を見つけると怒ってまた追いかけてくる。今度こそ鰻は、アジの隠れる岩陰のほうに向かって逃げた。チョウザメも追いかけてくる。鰻は、アジのそばまでやってきて、ひょいと体を横滑りさせた。すると猛突進してきたチョウザメの鋭利な口先が、ぬるりと鰻の表面で滑り、隠れているアジの顔面めがけ、突き刺さるのがみえた。
まんまと、アジに仕向けた作戦が成功した。
チョウザメはそこで満足したのか、気を失ったアジをしり目に、ようやくその場を立ち去った。
アジは、チョウザメの尖った口に追突したため、生死の境を彷徨っている様子だった。
しばらくしてアジが不意に目を覚まし、急に怒りだした。
「ひどいじゃないか。鰻君。なんでボクのいる方向に逃げてくるのだい。あやうく死にかけたじゃないか」
アジは、腹を立て鰻に詰め寄った。
鰻はそこで下顎を突き出して、こう答えた。
「それがあの世とこの世の境目さ。よくお覚えておくといいよ」
それからというもの、アジと鰻の仲は急に悪くなり、鰻はアジと顔を合わせないように、川や沼で暮らすようになったという。
キャビアの件を境に、鰻の尾びれは丸く変化し、全身が黒くなり、下顎が出たので、それ以来、アナゴとは間違われなくなった、というお話。
了
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――こいつを一度、懲らしめてやりたい。
今まで仲が良かっただけに、鰻の怒りの振り子は大きく反対側に触れた。怒気からか、みるみる体中に真っ黒い色が浮き上がってきた。
「ところでアジ君、君はあの世とこの世の境目というのを知っているかい?」
「そんなものは知らないなあ」
ぼんやりとアジが返事をするとその背後に向かって、鰻が、あっと、叫んだ。
「また、チョウザメがこっちへやってきた。早く、アジ君、先ほどの岩場に隠れたほうがいいよ」
やがて、チョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってきた。
鰻を見つけると怒ってまた追いかけてくる。今度こそ鰻は、アジの隠れる岩陰のほうに向かって逃げた。チョウザメも追いかけてくる。鰻は、アジのそばまでやってきて、ひょいと体を横滑りさせた。すると猛突進してきたチョウザメの鋭利な口先が、ぬるりと鰻の表面で滑り、隠れているアジの顔面めがけ、突き刺さるのがみえた。
まんまと、アジに仕向けた作戦が成功した。
――こいつを一度、懲らしめてやりたい。
今まで仲が良かっただけに、鰻の怒りの振り子は大きく反対側に触れた。怒気からか、みるみる体中に真っ黒い色が浮き上がってきた。
「ところでアジ君、君はあの世とこの世の境目というのを知っているかい?」
「そんなものは知らないなあ」
ぼんやりとアジが返事をするとその背後に向かって、鰻が、あっと、叫んだ。
「また、チョウザメがこっちへやってきた。早く、アジ君、先ほどの岩場に隠れたほうがいいよ」
やがて、チョウザメがゆらゆらとこちらへ向かってきた。
鰻を見つけると怒ってまた追いかけてくる。今度こそ鰻は、アジの隠れる岩陰のほうに向かって逃げた。チョウザメも追いかけてくる。鰻は、アジのそばまでやってきて、ひょいと体を横滑りさせた。すると猛突進してきたチョウザメの鋭利な口先が、ぬるりと鰻の表面で滑り、隠れているアジの顔面めがけ、突き刺さるのがみえた。
まんまと、アジに仕向けた作戦が成功した。
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