金太とたぬき母(2)
金太とたぬき母(2)
2023/03/28(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)
「遅かったな。ようやく戻ってきたか」
父親に化けた姿で狸が草むらから金太の前に現れた。
――こいつは狸だな。
酔ったら起きない父親を知っている金太は反射的にそう思った。
「これは、これは、お父さん、お迎えありがとうございます」
男は化けた父親に向かって丁寧に礼を述べた。
「おまえの帰りが遅いので心配した」
「それはすみません。会合が長引いたもので。家までまだ四半刻(三十分)はかかりましょう」
「一緒に帰るか」
「私はカゴを背負っております。よろしければお父さんをカゴで背負って家まで帰りましょう」
実際の父親であればそんな馬鹿げた話に頷くはずはない。そうおもいつつ、金太は訊ねた。
「そうか。それはうれしい。ぜひカゴで連れ帰ってくれ」
楽をしたい狸は、即答で頷き、言い終わらないうちに、カゴのなかに飛び乗ってきた。
重さで背をもっていかれたが、金太はふんばり、カゴにのせた父親を運びながら、ゆっくりと歩いた。
狸はそれほど重くない。それが若い男にも幸いだった。
「そうだ、今日は寒かろうとおもって、途中で柊をとってきました。カゴの上からかけてあげましょう」
カゴを背から乱暴におろした。そのまま、途中で拾った大量の柊の葉をカゴめがけ投げ入れた。
「い、痛い」
狸がぼやく。
「では参りましょう」
男はカゴを再び、勢いよく背負った。
しばらく黙って山道を歩いた。
家路が近くなってきた頃、背後から、い、痛い、痛い、という声が再び聞こえた。どうやら、柊の尖った葉が、狸の全身にあたって苦しいらしい。
男は、ほくそ笑んだ。
「ちょ、ちょっと止まってくれ。我慢できない」
狸はたまらなくなって、カゴから飛び降りた。恨めしそうな目つきで全身を手でさすり、元の姿に戻り、煙とともにその場から消えてしまった。
「これでこりたに違いない。しかし、あれで悪さをやめるだろうか。ひょっとしたら仕返しを父親に」
男は大急ぎで家に戻った。
「お父さん、起きてください。いま狸を化かしてやりました。しかし必ず仕返しにくるはずです」
そう父親の肩をゆすると、父親が眠そうに目をあけた。
つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)
物語についてのご意見はこちらから
「遅かったな。ようやく戻ってきたか」
父親に化けた姿で狸が草むらから金太の前に現れた。
――こいつは狸だな。
酔ったら起きない父親を知っている金太は反射的にそう思った。
「これは、これは、お父さん、お迎えありがとうございます」
男は化けた父親に向かって丁寧に礼を述べた。
「おまえの帰りが遅いので心配した」
「それはすみません。会合が長引いたもので。家までまだ四半刻(三十分)はかかりましょう」
「一緒に帰るか」
「私はカゴを背負っております。よろしければお父さんをカゴで背負って家まで帰りましょう」
実際の父親であればそんな馬鹿げた話に頷くはずはない。そうおもいつつ、金太は訊ねた。
「そうか。それはうれしい。ぜひカゴで連れ帰ってくれ」
楽をしたい狸は、即答で頷き、言い終わらないうちに、カゴのなかに飛び乗ってきた。
重さで背をもっていかれたが、金太はふんばり、カゴにのせた父親を運びながら、ゆっくりと歩いた。
狸はそれほど重くない。それが若い男にも幸いだった。
「そうだ、今日は寒かろうとおもって、途中で柊をとってきました。カゴの上からかけてあげましょう」
カゴを背から乱暴におろした。そのまま、途中で拾った大量の柊の葉をカゴめがけ投げ入れた。
「い、痛い」
狸がぼやく。
「では参りましょう」
男はカゴを再び、勢いよく背負った。
しばらく黙って山道を歩いた。
家路が近くなってきた頃、背後から、い、痛い、痛い、という声が再び聞こえた。どうやら、柊の尖った葉が、狸の全身にあたって苦しいらしい。
男は、ほくそ笑んだ。
「ちょ、ちょっと止まってくれ。我慢できない」
狸はたまらなくなって、カゴから飛び降りた。恨めしそうな目つきで全身を手でさすり、元の姿に戻り、煙とともにその場から消えてしまった。
「これでこりたに違いない。しかし、あれで悪さをやめるだろうか。ひょっとしたら仕返しを父親に」
男は大急ぎで家に戻った。
「お父さん、起きてください。いま狸を化かしてやりました。しかし必ず仕返しにくるはずです」
そう父親の肩をゆすると、父親が眠そうに目をあけた。
つづく
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「遅かったな。ようやく戻ってきたか」
父親に化けた姿で狸が草むらから金太の前に現れた。
――こいつは狸だな。
酔ったら起きない父親を知っている金太は反射的にそう思った。
「これは、これは、お父さん、お迎えありがとうございます」
男は化けた父親に向かって丁寧に礼を述べた。
「おまえの帰りが遅いので心配した」
「それはすみません。会合が長引いたもので。家までまだ四半刻(三十分)はかかりましょう」
「一緒に帰るか」
「私はカゴを背負っております。よろしければお父さんをカゴで背負って家まで帰りましょう」
実際の父親であればそんな馬鹿げた話に頷くはずはない。そうおもいつつ、金太は訊ねた。
「そうか。それはうれしい。ぜひカゴで連れ帰ってくれ」
楽をしたい狸は、即答で頷き、言い終わらないうちに、カゴのなかに飛び乗ってきた。
「遅かったな。ようやく戻ってきたか」
父親に化けた姿で狸が草むらから金太の前に現れた。
――こいつは狸だな。
酔ったら起きない父親を知っている金太は反射的にそう思った。
「これは、これは、お父さん、お迎えありがとうございます」
男は化けた父親に向かって丁寧に礼を述べた。
「おまえの帰りが遅いので心配した」
「それはすみません。会合が長引いたもので。家までまだ四半刻(三十分)はかかりましょう」
「一緒に帰るか」
「私はカゴを背負っております。よろしければお父さんをカゴで背負って家まで帰りましょう」
実際の父親であればそんな馬鹿げた話に頷くはずはない。そうおもいつつ、金太は訊ねた。
「そうか。それはうれしい。ぜひカゴで連れ帰ってくれ」
楽をしたい狸は、即答で頷き、言い終わらないうちに、カゴのなかに飛び乗ってきた。
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