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幼子(おさなご)と與四郎(1)

幼子(おさなご)と與四郎(1)
2023/01/24(火) 08:30
(*神社やお寺に由来する伝承や日本に残る昔物語。今なら無料で全て読むことができます。メニューの『神社・お寺』から)

昔、播磨の国(いまの兵庫県)のとある村に與四郎(よしろう)という名の若者が住んでいました。毎日、畑を耕すものの、貧しい独り身でした。
與四郎は優しい男で、畑に向かう途中で虫が背を向け干上がっていると、転がしおこし水を与え、耕している土からモグラがでてくると、土中深く戻してやったりもしていました。
ある日、與四郎が家に帰ると、見知らぬ若い娘が家の中に入り込み、囲炉裏の前で座っていました。
「お、おまえさんは誰だい?」
與四郎が鍬を肩に担いだまま、土間で叫びました。
「おかえりなさいませ。お待ちしておりました。私はえなと申します」
「どうして見ず知らずのおまえさんが飯を準備している」
男は土間で吹き上がっている釜の煙を指さした。
「わたしの役目でございますので」
「役目とは異なことを申す。わしはまだ独り身だ。親も早くに亡くし、兄弟もいない」
「そんなことは気になさらず結構です。さあ、お腹もすかれているでしょうから、足と手を盥で洗われて、お召し上がりください」
與四郎は言いたいことはたくさんあったが、そこで口をつぐんだ。女はきれいな目をしており、悪人ではない気がした。そして、懐かしい、会ったことがあるような雰囲気の娘だった。
與四郎は、知らない娘を向かい合い、食事をした。娘は自分の顔を見て微笑んでいる。見ず知らずの女と向き合い、飯を食らうというのは変な心持だった。
布団は女に与え、與四郎は土間で寝転んだ。夏だから寒くはなかったが、耳元をうろつく虫が気になって眠りは浅かった。
次の日も、女は家にいた。出ていく気配がない。與四郎は不思議な心持だったが、半年も過ぎると、あたりまえになった。
「若くて綺麗な娘が與四郎の家に転がり込んできたらしい」
というのは村では評判となった。
誰も悪口は言わなかったが、それでも不可思議な二人の生活が評判なのには違いなかった。
「おい、えな。おまえ、少し背が縮んだか?」
そう與四郎が口にしたのはえなが家に来てから一年以上経過してからだった。
「そうでしょうか」
「着物の裾をひきずっているぞ」
土間で飯を炊き終えた恵那に向かって告げた。買い与えた女ものの浴衣をえなは足で踏んづけている。
「本当ですね。肩のあたりも緩い。縮んだのでしょうか」
「そんなばかげた話は聞いたことがない」
與四郎は首をひねり、また買ってやろう、とつぶやき、飯の準備を手伝った。えなのそばに近づくと、懐かしい良い香がした。
年々異変は進んだ。
毎日少しずつえなは縮んでいった。それどころか八年後には背が半分ほどになり、人形の似合う少女に変貌していた。
言葉も幼くなり、與四郎のことを呼ぶ声も大人びないようになった。
與四郎はいつしか独り身のまま子供を育てる父親の存在となった。
與四郎も年をとる。気づけば十五年もの歳月をえなと過ごしている。
しかし、えなはそろそろオシメを変えてやらねばならない年ごろになってきた。幼な児のため言葉もままならなくない。
「よしよし、えな、おまえはいい子だ。いまから乳をくれるひとを探してきてやるからな」
與四郎はえなの乳母を探した。
同じ村には赤子を育てている女がいなかった。しかし、山を越えた先の村で一人赤子を生んだという女を発見した。
その女はわけありだった。旦那もおらず子供を産むと、我が子が流行り病にかかり死んでしまった、という。
意気消沈しているおはつという名の女をなんとか説得し、與四郎の家につれてきた。どことなく、えなの娘の頃に面影が似ている女だった。愛らしい黒い瞳をもっている。
数日家をあけたせいで、えなは部屋で泣き叫んでいた。
えなを目にした途端、おはつは、表情をやわらげ、おおかわいそうに、と畳にあがりこみ、赤子を抱きかかえた。手慣れたその扱いに、與四郎は、少しほっとした。
すると、えなはすぐに泣き止み、けらけらと笑い声をあげた。
その二人の姿はどこからみても親子そのものであり、與四郎も懐かしい風景を見ている錯覚に陥った。
「たすかりました。まるで昔からの親子の光景を見ているようだ」
あやす女の背に向かいそう告げると、おはつも目を細めた。
それから半年間、おはつはえなの乳母として與四郎とともに暮らした。
男と女は不思議なものだ。その後、與四郎とおはつは夫婦(めおと)となった。
おはつは知れば知るほど気立てのよい女だった。そのため気の優しい與四郎とは気が合った。
当然の成り行きだと、村人は噂した。


つづく
(*メニュー欄『神社・お寺』から物語のつづきや他の昔物語を今なら全て無料で読むことができます。)

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昔、播磨の国(いまの兵庫県)のとある村に與四郎(よしろう)という名の若者が住んでいました。毎日、畑を耕すものの、貧しい独り身でした。
與四郎は優しい男で、畑に向かう途中で虫が背を向け干上がっていると、転がしおこし水を与え、耕している土からモグラがでてくると、土中深く戻してやったりもしていました。
ある日、與四郎が家に帰ると、見知らぬ若い娘が家の中に入り込み、囲炉裏の前で座っていました。
「お、おまえさんは誰だい?」
與四郎が鍬を肩に担いだまま、土間で叫びました。
「おかえりなさいませ。お待ちしておりました。私はえなと申します」
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男は土間で吹き上がっている釜の煙を指さした。
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「役目とは異なことを申す。わしはまだ独り身だ。親も早くに亡くし、兄弟もいない」
「そんなことは気になさらず結構です。さあ、お腹もすかれているでしょうから、足と手を盥で洗われて、お召し上がりください」
與四郎は言いたいことはたくさんあったが、そこで口をつぐんだ。女はきれいな目をしており、悪人ではない気がした。そして、懐かしい、会ったことがあるような雰囲気の娘だった。
與四郎は、知らない娘を向かい合い、食事をした。娘は自分の顔を見て微笑んでいる。見ず知らずの女と向き合い、飯を食らうというのは変な心持だった。
布団は女に与え、與四郎は土間で寝転んだ。夏だから寒くはなかったが、耳元をうろつく虫が気になって眠りは浅かった。
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