世界にはどれくらいの名字があるのか

朝鮮半島や中国では名字を姓と呼びます。韓国における１９８５年の調査によれば韓国人の姓はわずかに２７４姓でした。未調査の北朝鮮を合わせてもおよそ３００種類程度ではないでしょうか。金・李(り)・朴(ぼく)の三大姓で全人口の４５％を占め、これに崔(さい)と鄭(てい)を加えた上位五姓で過半数を超えます。朝鮮半島では同姓であっても父方の発祥地（本貫地）によって区別し、慶州金氏とか金海金氏などと呼びます。このグループ分類は３４３５ほど確認されています。長く本貫を同じくする男女の結婚は法律で禁止されていました。これを「同姓同本禁婚」といいます。これにより１９６７年以降、結婚できない男女が約６万組もいたといわれていますが、近年になり韓国憲法裁判所がこの法律は違憲という判断を下しました。それでも親族たちの反対意識は根強く残っています。
　中国ではチベットやウイグルなどの辺境部族を除いた調査で、ほぼ３０００姓ではないかといわれています。このうち李姓が最も多く約１億人ほど。次いで王、張、劉(りゅう)、陳(ちん)、楊(よう)、趙(ちょう)、黄、周姓が続き、どれも優に１０００万人以上の使用者がいます。
　朝鮮や中国で姓が人口の割りに少ないのは儒教で祖先から受け継いだ姓を変えるのは不孝だという思想が根強く広まったことに由来しています。
　欧米では名字をファミリー・ネームと呼びます。全世界から移民が移り住んだ多民族国家であるアメリカには現在、１００万種類以上のファミリー・ネームがあるといわれています。アメリカは世界一の名字大国なのです。ほぼ単一民族国家ではフィンランドの３万種類が多いほうだとされています。またハンガリーは東洋のモンゴル民族が移り住んだ国家のため、ヨーロッパで唯一、姓名の順で表記します。
　なおモンゴルのように名字を持たない民族もいます。