全国名字めぐりの旅 第48回 山形県（9）

山形県鶴岡市といえば、庄内藩１６万７千石の城下町である。

最近は時代小説の人気作家、藤沢周平の作品にたびたび登場する海坂藩のモデルとなった藩として、映画の舞台となり、多くの観光客でにぎわっている。

庄内藩主は徳川四天王の筆頭、酒井忠次の子孫である。
忠次は徳川家康よりも１５歳年上で、幼い家康が駿河国(静岡県)の今川家へ人質に出されたときは随行して、家康を守った。
信長の命令で家康の長男信康が切腹を命じられたときも、信長のもとへ弁明の使者として派遣されたのは忠次である。

そんな忠次の子孫だから、庄内藩主は将軍家に忠誠を誓い、戊辰戦争が起こると最後まで佐幕派として戦ったが敗戦。
朝敵と呼ばれ、生活に窮した藩士たちは、新天地を求めて多くが北海道へ渡った。

山形県らしい名字といえば、清野(せいの)家がある。
山形県では情野(せいの)とも書く。
庄内藩士にもいるし、米沢藩士にも多い。
もともとは信濃国(長野県)から起こった名字といわれ、第５６代清和天皇の流れをくむ村上惟国の子が清野国仲と名乗ったことに始まるという。
嫡流は信濃に残って戦国時代、武田信玄と戦った村上義清の重臣となり、一族は越後国(新潟県)から羽前国(山形県)に広がった。
家紋は本家村上氏と同紋の「上文字」のほか、「三つ蔦」などを好んで使う。