名字ランキング 第107位　渡部

名字博士と愛ちゃんが　渡部姓について話しています。

「渡部さんと渡辺さんのルーツは同じなのよね」

「名字の歴史としては渡部さんのほうが断然古い。渡部さんは名字の前にあった氏に由来しているからね」

「渡部とは川の渡し場のことよね」

「渡部とは渡り辺のことで、川や海の渡し場のことだが、ワタの語源は海だ。海神(わたつみ)や海(わた)の原(はら)という言葉もあるだろう。だから渡部さんは海を舞台に活動した海族の代表ということができるんだ」

「日本は四方が海に囲まれているから、渡部さんの活躍の場も多かったわけね」

「その通り。最初は近畿地方を本拠としていたが、時代が下るとともに西や東に勢力を広げていった。そして渡辺さんが現れたわけだ」

 

「渡辺さんはどこから出たの？」

「摂津国渡辺津（大阪市内）だ。この地から第五二代嵯峨天皇（七八五―八四二）の流れをくむ嵯峨源氏の渡辺(わたなべ)綱(つな)が出た。綱は大江山の酒呑童子や一条戻橋で鬼女の片腕を斬り落とした大豪傑だからね。その人気はすさまじく、各地にいた渡部さんを吸収合併してしまった。そのため今では渡部さんの多くが綱の末裔と称し、渡辺さんの代表家紋である渡辺星を使うようになってしまった」

「古代の名族が新興のスター一族に取り込まれてしまったというわけね」

「渡部さんは時代の流れに逆らわなかったのさ。」