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日本のkamonはすばらしい文化遺産

日本のkamonはすばらしい文化遺産
2020/08/17(月) 08:30
女紋のことが出たので、家紋についても説明しておこう。

 家紋は日本固有のもので、外国でも「kamon」「mon」の名で知られている。家紋と似たようなものは西洋にもあるが、それらが貴族など特権階級の独占物であったのに対して、日本の家紋は庶民にまで広く浸透した。だから日本の「kamon」を知らない外国人は、あなたの家に先祖代々の紋章があると聞くと驚く。「おー失礼しました。あなたは貴族だったのですね。これからは爵位でお呼びしましょう」などと、時代錯誤なことをいう老紳士もいるほどだ。

 イギリスには現在でも紋章院があり、貴族の紋章と系譜を管理し、王家の儀礼をつかさどっている。紋章の歴史を研究する紋章学も盛んである。オックスフォード大学では紋章学をまなべば文学修士になることができるし、コンナ・ドイルが大の紋章好きだった話も有名である。コナン・ドイルはご存じの通りシャーロック・ホームズを生んだイギリスの医師だが、彼にとって探偵小説はほんのお遊び程度の趣味で、本当に没頭していたのは紋章の研究だったのである。

 横道にずれたが、話を家紋に戻そう。

 日本で最初に家紋を使ったのは西園寺実季(1035-92)という公家だった。明治後期に最後の元老といわれた首相西園寺公望のご先祖さまである。実季は自家用車の牛車(日本では馬車ではなく牛車を使った)に巴紋を描いて都大路を乗り回した。それまでも牛車や調度品にはさまざまな文様が描かれていたが、ある文様が親から子へ引き継がれることによって、それは家の紋、家紋になっていったのである。その親子継承を始めたのが西園寺家だった。

 日本でも家紋は当初、貴族だけが使っていた。西洋と同じである。ちなみに西洋の紋章も同じころに生まれている。文化の交流の無い日本と西洋で、ほぼ同時期に紋章が使われ出したのは興味深い。人間の考えることは、大差ないということだ。次に、これをまねて武家が使い出した。西洋でも騎士は紋章を持っている。やはり日欧共通である。ところが、次が違った。日本では江戸時代(1603-1867)になって、庶民にまで家紋が広がっていったのである。

 日本に比べると、朝鮮半島や中国は姓(ファミリーネーム)が極端に少ない。これは儒教の教えで姓を変えるのを嫌ったからである。西洋で紋章が庶民に広がらなかったのは、貴族が権威の象徴として独占したからである。どちらも徹底して行われた。ところが日本では、そういう名字や家紋のしばりがゆるかった。庶民の名字使用を禁じてはいたが、お上(かみ)の目が届かないところでは堂々と使っていた。家紋に至っては葵紋の使用禁止しかタブーがなく、商家が十六葉の菊紋を暖簾に描いて使っていても、幕府は何もとがめなかった。

 家紋は名字と組み合わせて考えると、ルーツを推理することができる。

名字は分家すると変えてしまうことがあるが、家紋は本家の紋に丸を加える程度の変化にとどまった。このように家紋は名字に比べると横断的に同族が同系統の家紋を使う特徴があるんだ。この法則を知っていると、家紋からルーツを推測することができる。

たとえば四つ目結は第59代宇多天皇(867-931)の流れをくむ宇多源氏佐々木一族の代表家紋である。佐々木以外の名字でも、この家紋を使っていれば宇多源氏につらなる家柄の可能性が高い。有名なところでは乃木希典将軍だろう。乃木家は佐々木氏の子孫だから四つ目結を変化させた家紋を使っている。同様に割り菱なら、第56代清和天皇(850-881)の流れをくむ清和源氏武田氏族の代表紋である。蝦夷地唯一の大名松前氏は武田一族と称しているから、丸に割り菱を家紋にしている。

 家紋は現在、約2万種類確認されているが、江戸時代に使われたものは多くても8.000程度だろう。そのほかの家紋は明治以降に新しくデザインされたもので、明治の新紋といわれている。明治の新紋には夫婦の家紋を組み合わせた複雑な形のものや将棋の駒、土星など珍奇なものがある。これらはしょせん遊びで作られたものだから、研究の対象にはならない。

 kamonのデザインは本当にすばらしい。何百年も前に生まれたにもかかわらず、いまだに世界に通用する斬新さがある。kamonを賞賛する外国の芸術家は多い。我々は、こんなステキなデザインを考案してくれたご先祖に感謝し、我が国の文化遺産としてkamonをもっと大切にしようではないか。

女紋のことが出たので、家紋についても説明しておこう。

 家紋は日本固有のもので、外国でも「kamon」「mon」の名で知られている。家紋と似たようなものは西洋にもあるが、それらが貴族など特権階級の独占物であったのに対して、日本の家紋は庶民にまで広く浸透した。だから日本の「kamon」を知らない外国人は、あなたの家に先祖代々の紋章があると聞くと驚く。「おー失礼しました。あなたは貴族だったのですね。これからは爵位でお呼びしましょう」などと、時代錯誤なことをいう老紳士もいるほどだ。

 イギリスには現在でも紋章院があり、貴族の紋章と系譜を管理し、王家の儀礼をつかさどっている。紋章の歴史を研究する紋章学も盛んである。オックスフォード大学では紋章学をまなべば文学修士になることができるし、コンナ・ドイルが大の紋章好きだった話も有名である。コナン・ドイルはご存じの通りシャーロック・ホームズを生んだイギリスの医師だが、彼にとって探偵小説はほんのお遊び程度の趣味で、本当に没頭していたのは紋章の研究だったのである。

 横道にずれたが、話を家紋に戻そう。

 日本で最初に家紋を使ったのは西園寺実季(1035-92)という公家だった。明治後期に最後の元老といわれた首相西園寺公望のご先祖さまである。実季は自家用車の牛車(日本では馬車ではなく牛車を使った)に巴紋を描いて都大路を乗り回した。それまでも牛車や調度品にはさまざまな文様が描かれていたが、ある文様が親から子へ引き継がれることによって、それは家の紋、家紋になっていったのである。その親子継承を始めたのが西園寺家だった。

 日本でも家紋は当初、貴族だけが使っていた。西洋と同じである。ちなみに西洋の紋章も同じころに生まれている。文化の交流の無い日本と西洋で、ほぼ同時期に紋章が使われ出したのは興味深い。人間の考えることは、大差ないということだ。次に、これをまねて武家が使い出した。西洋でも騎士は紋章を持っている。やはり日欧共通である。ところが、次が違った。日本では江戸時代(1603-1867)になって、庶民にまで家紋が広がっていったのである。

 日本に比べると、朝鮮半島や中国は姓(ファミリーネーム)が極端に少ない。これは儒教の教えで姓を変えるのを嫌ったからである。西洋で紋章が庶民に広がらなかったのは、貴族が権威の象徴として独占したからである。どちらも徹底して行われた。ところが日本では、そういう名字や家紋のしばりがゆるかった。庶民の名字使用を禁じてはいたが、お上(かみ)の目が届かないところでは堂々と使っていた。家紋に至っては葵紋の使用禁止しかタブーがなく、商家が十六葉の菊紋を暖簾に描いて使っていても、幕府は何もとがめなかった。

 家紋は名字と組み合わせて考えると、ルーツを推理することができる。

名字は分家すると変えてしまうことがあるが、家紋は本家の紋に丸を加える程度の変化にとどまった。このように家紋は名字に比べると横断的に同族が同系統の家紋を使う特徴があるんだ。この法則を知っていると、家紋からルーツを推測することができる。

たとえば四つ目結は第59代宇多天皇(867-931)の流れをくむ宇多源氏佐々木一族の代表家紋である。佐々木以外の名字でも、この家紋を使っていれば宇多源氏につらなる家柄の可能性が高い。有名なところでは乃木希典将軍だろう。乃木家は佐々木氏の子孫だから四つ目結を変化させた家紋を使っている。同様に割り菱なら、第56代清和天皇(850-881)の流れをくむ清和源氏武田氏族の代表紋である。蝦夷地唯一の大名松前氏は武田一族と称しているから、丸に割り菱を家紋にしている。

 家紋は現在、約2万種類確認されているが、江戸時代に使われたものは多くても8.000程度だろう。そのほかの家紋は明治以降に新しくデザインされたもので、明治の新紋といわれている。明治の新紋には夫婦の家紋を組み合わせた複雑な形のものや将棋の駒、土星など珍奇なものがある。これらはしょせん遊びで作られたものだから、研究の対象にはならない。

 kamonのデザインは本当にすばらしい。何百年も前に生まれたにもかかわらず、いまだに世界に通用する斬新さがある。kamonを賞賛する外国の芸術家は多い。我々は、こんなステキなデザインを考案してくれたご先祖に感謝し、我が国の文化遺産としてkamonをもっと大切にしようではないか。

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