全国名字めぐりの旅 第10回 岩手県（2）

家紋は約2万種類もある。
ある名字が独占的に使っている家紋は、その名字を冠して呼ばれる。
たとえば渡辺さんは三つ星に一文字という家紋を多用するため、これは「渡辺星」といわれる。
江戸時代の大名が使っていた家紋も独特なものが多く、大名の名字を冠して「津軽牡丹」や「南部鶴」などと呼ばれる。
図書館に行くと家紋図鑑があるから、自分の家紋を探してみてほしい。
もしも自分の家紋が「南部鶴」だった場合、たとえ南部という名字ではなくとも岩手県の殿様だった南部氏と系図上、つながっている可能性がある。
家紋について深く学ぶと、家系を調べなくとも、家紋からその家の遠いルーツが見えてくることがあるのだ。

　さて今回は岩手県の特徴的な名字として及川さんを取り上げよう。
岩手県では第九位の大姓である。
先祖は第五十六代清和天皇の子孫である清和源氏。
十二世紀に鵺(ぬえ)という怪鳥が内裏(だいり)(宮殿)に現れて天皇を悩ませたことがある。
頭はサル、胴はタヌキ、尾はヘビ、手足はトラという化け物だ。
及川さんはその鵺を弓矢で追い払った猛将、源頼政の子孫である。
頼政のひ孫にあたる頼忠は千葉県の豪族葛西氏に仕えた。
その葛西氏が宮城県へ移動するときに同行して下り、子孫は岩手と宮城県で広がった。
家紋は「剣花菱」や「松皮菱」「桔梗」紋などをよく使っている。
剣は先祖が武士であったことを示している。