全国名字めぐりの旅 第172回 神奈川県（5）

神奈川県には石田さんも多い。

　人数の多さでは愛知県に負けるが、神奈川からは歴史上有名な石田さんが出た。

　誰かといえば、石田為久である。
為久は寿永３年（１１８４）、鎌倉軍に属して木曽義仲と戦い、これを破った。
そして敗走した義仲の馬が泥田に入って身動きがとれなくなったとき、弓矢で義仲の兜(かぶと)を射抜き、その首級をあげる武功を立てた。

　為久は現在の神奈川県伊勢原市石田を本拠地とした武将で、第５０代桓武天皇（７３７－８０６）の流れをくむ桓武平氏の子孫。
家紋は「大一大万大吉」である。

　この家紋、どこかで見たことがあるだろう。
そう、豊臣秀吉の側近、石田三成も使っている。
三成は滋賀県長浜市石田町出身で、佐吉と名乗っていたころ、鷹狩り帰りの秀吉に熱さの違う三杯の茶を出して取り立てられた話は有名。
家紋から推測すると、どうも三成は為久の子孫らしい。
ちなみに、この家紋の意味は「一人が万民のために尽くせば幸せな世になる」ということ。

　三成はほかに「九曜(くよう)」紋も使っていたようだが、これも桓武平氏の代表家紋。
石田さんでこれらの家紋を使っている家は為久や三成と関係があるだろう。