全国名字めぐりの旅 第85回 富山県（6）

富山県には平安時代の武将藤原利仁の子孫が多いが、とくに有名なのは石黒さんである。
石黒さんは現在の富山県南砺市福光に福光城を築いて居城と定め、福光党という武士団を結成した。
源平合戦(治承の内乱。
１１８０－８５)のころは石黒太郎光弘がこの石黒党を率いて、信濃国（長野県）で平家打倒の兵を挙げ、北陸街道を通って京を目指していた木曽義仲の軍に合流したことが『平家物語』に見える。

　南北朝時代(１３３３－９２)には石黒左近大夫成行が南朝のために尽力し、福光城に後醍醐天皇の皇子である宗良親王を迎え入れた。
木曽義仲も南朝も歴史から見ると敗者である。
石黒さんは正義感が強いうえに義理堅い性格だったため、つねに敗者に味方した。
そして合戦では負けたが、決して滅びはしなかった。
生命力も強い家系なのだ。

　しかし、そんな石黒さんにも最後のときが来る。
いくたの試練を乗り越えてきた石黒さんを滅ぼしたのは織田信長だった。
信長の圧倒的な軍事力の前に石黒さんは敗れ、そして全国へ散った。

　家紋は「蛇の目」を好んで使うが、ほかに「七曜」もよく使う。