全国名字めぐりの旅 第72回 新潟県（6）

札幌で最初の百貨店といえば今井丸井。
市民は親しみをこめて「丸井さん」と呼ぶ。
この今井丸井を創業したのが新潟県三条市出身の今井藤七。

　藤七は嘉永元年（１８４８）に米穀商を営む商家に生まれた。
生家は豊かで父は町の惣代人（町民の代表）も務めていたが、奉行所の意に逆らって投獄されてしまい、家運は大きく傾く。
これを挽回するため藤七は明治４年（１８７１）、函館に渡ったが、老舗が多い函館では新規開拓の余地はないと判断し、ありったけの金で鍋や釜など小間物を買って大八車に積み、それを曳きながら徒歩で札幌に向かった。
当時の札幌は住民わずかに数百人。
藤七は「３０歳までは結婚しない。
４０歳まで絹物は身にまとわない」と神仏に誓って一生懸命に働き、間もなく完成した赤レンガ（開拓使）の御用達商人に指名されることによって大きく飛躍した。

　藤七の先祖は第３代安寧(あんねい)天皇の子孫といわれる長野県の今井兼平である。
今井丸井の「丸井」は商売で使う家印で、今井一族の家紋は桔梗や三つ笠松が多い。
とくに桔梗は「捻(ね)じ桔梗」を使う家もある。