全国名字めぐりの旅 第117回 茨城県（5）

茨城県那珂市大内という場所に中世、大内館というものがあった。
現在ではわずかに堀と土塁の跡が残るだけの忘れ去られた館である。
この館の主は大内与次郎義高という。
義高は第５６代清和天皇(８５０－８０)の流れをくむ清和源氏の子孫佐竹家に生まれたが、大内館に住んで大内に改姓した。
南北朝の戦乱のときには本家の佐竹義篤を助けて北朝足利氏に属し、延元元年（１３３６）の花房山大方川原（常陸太田市大方町）の戦いで常陸国の南朝勢力を殲滅した。
その後は足利尊氏に従い、後醍醐天皇の菩提を弔うために創建された天龍寺の供養行列にも加わっている。
家紋は本家佐竹氏と同じ「日の丸扇」をよく使う。

　大内氏というと、山口県の戦国大名大内義隆を思い出すが、こちらは古代朝鮮半島にあった百済(くだら)国王の子孫で、家紋は「大内菱」。
ほかに福島県発祥の大内氏は第３８代天智天皇の重臣藤原鎌足(６１４－６９)の流れをくむ菊池氏の子孫といわれ、「三枚笹」紋などを使う。

　複数のルーツを持つ名字にとって家紋は重要である。
家紋によっておおよその流れが分かるからだ。
現在、大内さんが一番多い県は茨城県。