全国名字めぐりの旅 第90回 富山県（11）

富山県には珍しい名字が目立つが、とくに珍姓の宝庫といわれるのが射水市である。
ここには米・味噌・小豆・網・風呂・大工・小間物・飴・菓子・糀(こうじ)などの珍姓がいくらでもある。
なぜこんな名字ができたかというと、明治５年（１８７２）の壬申(じんしん)戸籍のときだった。
壬申戸籍は近代最初の戸籍で、庶民が始めて名字を登録した戸籍だが、この地方の人々はうかつに名字を登録すると税金を取られると思い込んでいた。
そのためなかなか登録しなかったのだ。
しかし政府が明治８年（１８７５）に名字必称令を出したので、仕方なく登録に行った。
そのとき職業をそのまま名字にした人が多かったという。

　ほかに田・草・津・戸・野などの一字姓も多い。
理由は書きやすいからだろう。
富山県人は大らかだ。

家紋は木瓜が圧倒的多数。
全体の３割に近い。
富山県ではルーツに関係なく３人に１人は木瓜紋を使っているのだ。
木瓜(もっこう)がこれだけ広がったのは、恵比須様のシンボルと信じられていたからだ。
恵比寿様は豊漁の神様である。
そのため最初は漁民が使い始め、それがじわじわと県内全域に広がっていった。
木瓜の次に多いのは「かたばみ」紋である。