全国名字めぐりの旅 第12回 岩手県（4）

源頼朝は文治五(１１８９)年に謀反人、源義経(頼朝の異母弟)を匿っていた奥州藤原氏を滅ぼした。
この討伐軍に平将門を滅ぼした藤原秀郷(ひでさと)の子孫、河村千鶴丸が参加していた。
時に十三歳。
これは数えの年齢なので、現代でいえば小学六年生である。
そんな少年が家名の再興をかけて、この戦いに命をかけたのである。
岩手県や北海道の河村、川村さんの多くは、この千鶴丸の子孫だが、そのことを知る人は少ない。

河村家は千鶴丸の兄河村義高が平家に属し、頼朝に敵対したため没落。
幼い千鶴丸は母に連れられて山里に隠れていたが、奥州征伐軍が鎌倉を出立することを知り、千鶴丸は旧臣を呼び集めてこれに加わった。

　そして奥州に到ると「我こそは河村千鶴丸である」と大声で叫び回り、小さな身体で大人と互角に戦い続けた。
なんとしても自分の存在を大将頼朝に気づいてもらいたかったのである。
その願いは通じ、千鶴丸の健気な武者ぶりに気づいた頼朝は褒め称え、元服させて河村四郎秀清と名乗らせ、現在の岩手県に所領を与え、河村家の再興を許したのである。
それから数百年、千鶴丸の子孫は東北全体に広がり、河村、川村、日戸、渋民、玉山、藤本、川口、下田、沼宮内、大萱生、手代森、栃内、江柄、大巻、中村氏などと名乗った。
家紋は「違い棒」と「百足(むかで)の丸」などを使っている。