全国名字めぐりの旅 第9回 岩手県（1）

岩手県人といえば我慢強く、寡黙で、保守的という印象がある。
原敬など多くの総理大臣を出していることでも有名である。
原敬は盛岡藩の家老を務めた原直記の孫で、ルーツをさかのぼると近江国(滋賀県)の戦国大名、浅井氏の一族。
織田信長の妹といわれる絶世の美人、お市の方を妻に迎えた浅井長政とは親戚だ。
浅井家は信長に滅ぼされたが、長政の娘淀殿が豊臣秀頼を生み、お江与が徳川家光を生んだことから、浅井家の血は天下人の血となって後世に伝えられた。
家紋は「丸の内に三つ引き」である。

　江戸時代に原家が仕えていた岩手県のお殿様、盛岡藩主南部氏も名門である。
その始祖は五十六代清和天皇。
この天皇の六男だった貞純親王の子である六孫王が臣籍に降下して源姓を授かり源経基と名乗った。
その子孫は清和源氏と呼ばれ、武家の棟梁として大いに活躍した。
鎌倉幕府を開いた源頼朝、室町幕府を興した足利尊氏、風林火山の軍旗で有名な武田信玄も清和源氏である。
その武田氏の分家筋にあたるのが南部氏で、十四世紀ころ甲斐国(山梨県)から東北へ移住したという。
南部氏の嫡流は「南部鶴」紋を使い、一族は「割り菱」などの菱紋を多く使っている。