全国名字めぐりの旅 第42回 山形県（3）

山形県の女性は我慢強く、よく働き、夫婦共働きの家が全国平均よりもはるかに多い。
そしてコツコツと貯金に励む。
そんな山形県人の憧れだった大金持ちが酒田市の本間家である。

本間家の先祖は商売で儲けた金を元手に貸金業で財を増やし、広大な土地を買い占めて大地主となった。
その財産は尽きることが無いともいわれ、酒田では「本間さまには及びもせぬが、せめてなりたや殿様に」という俗謡まで歌われた。
ここでいう殿様とは、藤沢周平の小説でしばしば登場する海坂藩のモデルとなった庄内（酒田）藩１７万石の藩主酒井家である。
領民たちは殿様よりも本間家のほうが、はるかに大金持ちであることをよく知っていたのだ。
最盛期には本間家だけで酒田市の税金の四分の一を納めていたという。

この本間家の先祖は第五代孝昭天皇だという。
この天皇の子孫から平安前期に小野篁(たかむら)が出た。
詩を作らせれば天才と呼ばれた人物だが、目上の者に対してはばかることなく意見をするため、「野狂」と恐れられた政治家である。
その子孫が武士となって関東へ下り、現在の神奈川県厚木市にある本間という地に住み着いて本間という名字を名乗り始めた。
後に本間さんは本拠地を佐渡島へ移す。
鎌倉時代から戦国時代まで約３００年、本間家は佐渡島を支配したが、上杉景勝によって滅ぼされた。
酒井の本間家はその分家である。
滅亡後、一族は山形や新潟に散った。
酒田本間の家紋は「丸に本文字」。
ほかに「獅子頭」紋も使用する。