全国名字めぐりの旅 第31回 秋田県（5）

故丹羽基二博士は名字や家紋の本を１５０冊以上も書いており、日本の名字研究を大きく前進させた碩学(せきがく)だった。
残念ながら日本の歴史学界では異端の研究者として評価されなかったが、外国では日本の名字と家紋を解説できる唯一の専門家として広く認められていた。

あるとき秋田県に多い名字で、北海道へ移住した家も多い進藤姓についても、話したことがあった。

私が「進藤姓は藤原(ふじわらの)為輔(ためすけ)という人物が修理(しゅりの)進(しん)(宮中の造営・修理を担当する役所の三等官)に任ぜられて、進藤と名乗ったことに始まると名字辞典にはありますが、現在、全国にいる約８０００の進藤さんは、全員この人の子孫なのでしょうか？」と訊くと、先生は「全員、進藤為輔の血脈かといえば、そうとは限らない。
なかには進藤家の家臣だった家やその領地に住んでいた家もあるだろう。
だから名字辞典を鵜呑みにして机上で学問してはいけないよ。
実際にその家の家系を調べて、個々の名字の由来を読み解くことが重要なんだ」と言われた。
ちなみに進藤さんは「下り藤」や「茶の実」紋をよく使っている。