全国名字めぐりの旅 第19回 宮城県（4）

　「きくち」さんには菊地さんと菊池さんがいる。
宮城県の菊地さんは県内名字ランクの第十五位で、菊池さんは岩手県の第五位。

どちらの「きくち」さんも遠い祖先は同じで、現在の熊本県菊池市から発祥した中世の名族である。
市名からも分かる通り元々は菊池と書くのが本流。

　菊池一族の名を高めたのは菊池武時である。
武時は南朝後醍醐天皇の密命を奉じて鎌倉幕府打倒に立ち上がり、幕府の九州総督府だった九州探題の館を襲って戦死した。
その志は息子の武光に引き継がれ、後醍醐帝の皇子が九州に上陸すると武光は菊池城に迎え入れ、北朝の天皇を担ぐ室町幕府の勢力と戦ったが、武光は合戦の名人で何倍もの敵を蹴散らして大いに九州の南朝勢力を盛り立てた。
そして菊池氏は各地に南朝の拠点を築くため、一族を全国に派遣した。
東北の「きくち」さんはこのとき移動したのである。
東北の菊地さんの中には九州の本家に遠慮して池を地に改めた家がある。
宮城県に多い菊地さんがそうである。
菊地さんは謙虚な性格だったのだ。

　南朝に命を捧げた菊池一族は明治になって大々的に顕彰され菊池市には菊池一族を祀る菊池神社も創建された。
家紋は「違い鷹の羽」や「菊菱」紋をよく使っている。