全国名字めぐりの旅 第177回 山梨県（1）

山梨県の旧国名は甲斐(かい)。甲州ともいい、お国自慢は武田信玄だ。信玄は戦国最強といわれた武田家臣団を手足のごとく使って越後（新潟県）の上杉謙信と激戦を繰り広げた。山梨県にはいまでも信玄ゆかりの家が多い。そのため武田信玄の悪口を言うのは厳禁である。山梨県人はいまでも信玄のことを神様として敬っているからだ。事実、信玄は神様だ。甲府市にある武田神社で祭神として祀(まつ)られている。
そんな山梨県で多い苗字は深沢さん。明治３６年（１９０３）南湖村（南アルプス市）から音江村（深川市）へ移住した深沢吉平は３０歳の若さで音江村長に選ばれ、農業改革に取り組んだ。二宮尊徳とキリスト教の影響を受けて天と人と土を愛する三愛主義を唱えた吉平は、５２歳の時には衆議院議員となって日本の農業政策にも貢献した。
深沢さんの発祥地は山梨県甲州市勝沼町深沢。武田信玄と同じ第５６代清和天皇（８５０－８１）の流れをくむ清和源氏で、秋山光章の孫がこの地に住み着いて深沢光盛と名乗ったことに始まる。家紋は松皮菱と花菱をよく使う。
なお、古くは深澤と書く。澤が本来の漢字だが、いまは新字体の沢を使う家が多くなった。