全国名字めぐりの旅 第110回 福井県（9）

カレーライスという言葉を日本で最初に記録したのは、札幌の医師三田村多仲といわれている。
明治８年（１８７５）の日誌にカレーライスと書いてある。
それ以前に札幌農学校のクラーク博士がライスカレーを学生に食べたさせたという記録もある。

　三田村多仲は天保９年（１８３８）に現在の福井県越前市中平吹で生まれた。
長崎で西洋医学を学び、明治になると樺太病院の院長となった。
その後、札幌病院の副院長に転じ、晩年は札幌に三田村病院を開院した。
三田村が樺太滞在中に書いた日誌は明治初期の樺太を知るうえで貴重な史料とされ、北海道文書館に所蔵されている。

　多仲の先祖は滋賀県長浜市三田から発祥し、遠い祖先は朝鮮半島からの渡来民といわれている。
しかし滋賀県北部の戦国大名だった浅井氏から養子を迎え、その一族となった。
織田信長の妹お市を妻にした浅井長政の時代には、三田村左衛門尉(さえもんのじょう)が長政を補佐したが、長政は信長を裏切ったために滅亡する。
このとき三田村一族も多くが殺されたが、生き残った者は福井県へ逃れた。

　家紋は「橘」と「五三桐」をよく使う。