全国名字めぐりの旅 第73回 新潟県（7）

樋口さんも新潟県には多い。

　樋口さんといえば上杉景勝の右腕として活躍した直江兼続を思い出す。
直江は長尾氏の家臣・樋口兼豊の長男として生まれ、その才能を見込まれて謙信の重臣直江景綱の婿養子に迎えられた人物である。

　その活躍はＮＨＫ大河ドラマで詳しく描かれたので説明しないが、兜に愛文字の前立てを付けて戦場を疾駆した。

　樋口さんのルーツは今井さんと同じである。
源氏の一族である木曽義仲が信濃国（長野県）に潜伏したとき、樋口さんや今井さんの父親である中原兼遠の妻が乳母を務めた。
この中原氏は第３代安寧(あんねい)天皇の子孫といわれる名族である。
義仲が成長すると、兼遠の二人の息子はその家臣となった。
兄の今井兼平と弟の樋口清光である。
親子兄弟で名字が異なるが、これは当時の習慣で、親元から離れて新たに館を築いた場所の地名を名字にしたのだ。
兼平は現在の松本市今井に住んで今井姓、兼光は東筑摩郡朝日村樋口に砦を築いて樋口姓を名乗った。

　家紋は今井さんと一族なので同じ桔梗や松紋をよく使うが、ほかに笹竜胆、松皮菱の家もある。