全国名字めぐりの旅 第63回 福島県（12）

福島県には一度聞いたら忘れない印象深い名字がある。
新妻さんだ。
「にいづま」「にいつま」と読む。
なんとも縁起の良い名字である。
好きあって結婚し、夫のもとに嫁いできた妻は幸せの象徴である。
新妻がいつしか母となり、後継ぎを産む。
そう考えれば子孫繁栄の始まりでもある。
ルーツを尋ねると会津藩士の子孫という家が多い。

　この名字はどのようにして生まれたのだろうか。
調べてみると地名に由来することが分かった。
現在の千葉県成田市に新妻という地名がある。
「にっつま」と読む。
元々の読みは「にっつま」だったのだ。
この新妻の地に平安時代(７９４－１１８５)の末期、第５０代桓武天皇(７３７－８０６)の流れをくむ桓武平氏の子孫が住み着き、新妻五郎常親と名乗ったことに始まる。
その後、本拠を福島県に移し、会津藩士や仙台藩士となった家もある。
家紋は「九曜(くよう)」をよく使う。
九曜は夜空の星をかたどった紋だが、紋帳を見ると「土星」という紋もある。
これは明治以降に創作された新しい家紋である。

　なお「にっつま」とは新しく開墾した土地の端っこのことで、残念ながら恋愛とは全く関係ない。