全国名字めぐりの旅 第61回 福島県（10）

日本の懐かしい風景といえば、里山である。
たわわに実りこうべを垂れる稲穂、青々と茂る草木、むかしはどこにでもあった。
そういう里山を流れる小川を緑川と呼ぶことがある。
ほかの名を付けられることもあるが、低い湿地を流れる小川の場合は緑川と名付けられる可能性がある。
その川辺に住んでいた家が緑川を名字にした。
こうして緑川さんが誕生するわけだ。

　日本で最も緑川さんが多いのは福島県いわき市である。

　ルーツについては定かではないが「九州から殿様に付いて福島県にやって来た」という伝承が残っている。
これが事実だとすれば福岡県柳川市の殿様だった立花宗茂が棚倉藩（福島県東白川郡田名蔵町）主になったときに付き従って来たのかも知れない。
立花氏の家臣のなかには熊本県出身の者もいたが、熊本市には緑川という地名もある。
ずいぶんと遠い距離を旅してきた名字である。

　緑川さんは福島県に来てからも旅を続け、隣県の宮城県や栃木県にも移り住んだ。
福島県や宮城県の緑川さんの多くは戦国時代や江戸時代、武士だった。
家紋は「丸に三つ星」や「三つ盛り亀甲(きっこう)に花菱」紋などをよく用いている。