全国名字めぐりの旅 第34回 秋田県（8）

奈良さんという名字がある。
秋田県に多く、とくに県北部に密集している。
全国的にみると柳楽・乃楽・名良・奈羅・那羅・那良・柞・楢と書いて「なら」と読ませる家もある。
この「なら」という名字は「なら」と呼ばれた地名から発祥した名字だが、「なら」という言葉の語源についてはいくつかの説がある。
　　①古代朝鮮語で都や国を意味する「なら」に由来するという説、②大和言葉の「ならす」「平らにする」という意味、③植物の楢の木が生えているところという説である。
かつては古代朝鮮語説が有力視されていたが、それでは説明できない「なら」地名も多いため、現在では②が定説となっている。
その昔、奈良県にあった平城京も「平らな都」という意味であり、民俗学者の柳田国男も「なら」とは山間や平野にある小高い平地のことだろうといっている。

　秋田県の奈良さんは藤原姓という。
武蔵国忍(おし)城(現在の埼玉県行田市)の城主だった成田氏の分家が同国にあった奈良村(現在の埼玉県熊谷市)に住み着いて奈良姓を名乗った。
その後、源頼朝の奥州征伐に従軍して軍功をあげ、出羽国鹿角郡(現在の秋田県鹿角市)に所領をたまわり、移り住んだのである。
この鹿角郡には日本有数の鉱山である尾去沢銅山があった。
奈良さんのなかには、この鉱山に関わっていた家もある。
家紋は「三つ柏」と「隅立て四つ目」などを使う。