全国名字めぐりの旅 第52回 福島県（1）

司馬遼太郎は会津藩に強い愛着を持ち、会津藩士の武士道を称賛した。
たしかに幕末、会津藩は次々と押し寄せる新政府軍と徹底的に戦い、１５、６歳の少年や女性までが戦場に散った。
その武士道教育は男女の別なく浸透していて、卑怯な振舞いをした者はいなかったという。
その精神は現在でも福島県人の血に流れていて、福島県の人は正義感が強く、めったなことでは人を裏切らない。
女性は愛想がいいが、芯は強い。

　そんな福島県に多い名字といえば、渡辺さんである。

　渡辺という家のルーツをたどると、平安時代の豪傑にたどりつく。
渡辺綱である。
綱は天暦７年(９５３)に関東で生まれた。
祖先は中国をこよなく愛した嵯峨天皇である。
綱は母の故郷である現在の大阪市中央区に移り住み、そこにあった渡辺という土地に館を築いて、渡辺綱と名乗った。
これが渡辺という名字の始まりである。

　綱は源頼光の四天王の一人に数えられ、酒呑童子や鬼を退治して、大いに剛勇を称えられた。
現在の渡辺さんの大半は、この綱の子孫だといわれている。
家紋は「渡辺星」や「三つ星」を好んで使う。