全国名字めぐりの旅 第122回 茨城県（10）

小沼さんは関東地方に多い名字であるが、とくに茨城県には多い。
茨城県の小沼さんの特徴は読み方にある。
茨城県ではほぼすべての家が「おぬま」と読ませるのだ。
埼玉県では圧倒的に「こぬま」が多く、東京都でも「こぬま」が多い。
しかし全国規模でみると「こぬま」は三割ほどしかいない。

　茨城県の小沼さんは鉾田市鹿田を本拠地とし、まず第５０代桓武天皇(７３７－８０６)の流れをくむ桓武平氏の小沼さんが発祥し、次いで第３８代天智天皇の重臣藤原鎌足(６１４－６９)の流れをくむ藤原氏の小沼さんが生まれた。
この二つの小沼さんは混ざり合って一体となった。
家紋は「抱き沢瀉(おもだか)」と「四つ目菱」を好んで使う。
沢瀉という家紋は湿地帯に茂っている水草で、三枚の葉が楯のように見えることから武士が愛用した。
この家紋を旗指物に描いて戦場にのぞめば、敵の攻撃から身を守れると信じていたのである。

　全国の小沼さんのうち「おぬま」読みの家は茨城県出身の可能性が高い。
同じ名字でも地域によって読み方が違う。
それによって出身地が分かることもある。
名字と家紋は、まさにご先祖が残してくれた家の歴史を読み解く鍵である。